■ペール・ギュント

■原作:ヘンリック・イプセン,演出:ヤン・ジョンウン,演奏:国広和毅,関根真理,出演:浦井健治,趣里,浅野雅博,キム・デジン他
■世田谷パブリックシアター,2017.12.6-24
■主人公ペール・ギュントは自分探しの旅に出る。 そこで多くのことを経験するが心が満たされぬまま年老いてしまい故郷に戻ることになる。 そして昔の恋人の腕の中で安らかに眠りにつく物語です。
美術は地味ですが衣装や小道具はカラフルで群衆群舞の多い賑やかな舞台です。 七場のトロール王国では「マッドマックス怒りのデスロード」、十三場は「猿の惑星聖戦記」をチラッと思い出してしまった。 演出家ヤン・ジョンウンは平昌冬季オリンピックも担当しているらしい。 この作品は幾つものショートストーリーで出来ているのでオリンピック開会式と構造が似ている。 演出家は同じノリで作ったのかもしれない。 来年のオリンピックが楽しみですね。
でも前半の舞台は戸惑いました。 場面ごとの話が積みあがっていかない。 ペールの経験が彼の成長に繋がっていくのがみえない。 彼の喜怒哀楽がぶっきらぼうで表面的な為です。 しかし後半に入り俄然調子が出て来た。 場面ごとの物語に深みが出てきたからです。 歳を取り経験だけを増やす虚しさがペールの科白や動作に加わったこともある。 終幕、恋人ソールヴェイが昔の母と暮らした家のミニチュアを持って登場します。 ペールが旅に出る前から自分探しの答えはそこにあったということでしょうか。
日本語とハングルの混在は違和感がありません。 そして演奏は歌唱も混ぜて物語を面白く持ち上げていた。 全体にキリスト教の影響が大きいですね。 科白に聖書の言葉が多い。 舞台美術や衣装にもそれがみえます。 韓国の宗教事情が現れているのでしょう。 席を見回すと9割は女性でしたが役者贔屓客のようです。
*日韓文化交流企画世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/201712peergynt.html