■誰もいない国

■作:ハロルド・ピンター,演出:ショーン・マサイアス,出演:イアン・マッケラン,パトリック・ステュワート
■TOHOシネマズ六本木ヒルズ,2017.9.22-28(2016年作品)
■ツマラナイようでオモシロイ。 のような感じの芝居かしら?  バーカウンタのある室内劇で登場人物は4人。 主人公は二人の老人で大学の友人らしい。 彼らの近況や心身状態、昔話に対話が弾む。 でも人物や背景がよくわからないまま進むから不可解な雰囲気が漂っている。 科白は難解な語彙が散りばめられていて舞台から抜け出してしまうことが度々あったわ。 二人は詩人でもあるらしい。 パブの評価やハムステッド・ヒースのこと、英語の優位性のこと、別荘や芝生の話からロンドンの生活が垣間見える。
しかもこれだけ飲む芝居も珍しい。 終わるまでにウィスキー・ウォッカ・シャンペンのボトルを5・6瓶は開けたかしら? 後半、昔の恋人の話をする場面が一番盛り上がったかな?
アフター・トークがあったのは嬉しい。 イアン・マッケランが二人は認知症にかかっていると言っていたけどどうかしら? でも納得できる場面が一杯ね。 そしてピンターが活躍していたイギリス地方巡業の話も出るから楽しい。
この作品にはピンターの俳優時代が詰まっている感じがする。 ひょっとしてウディ・アレンのコメディアン時代と似ていたんじゃない? そしてピンターの舞台はいつもどこか金属的な匂いがする。 話は飛ぶけどジョゼフ・ロージーの映画にはそれが無い。 これはロージーがピンターの金属色を消してしまったのよ。 ともかくピンター脂が乗り切っていた頃の一品だとおもう。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/86632/
*追記。 ピーター・ホールが12日に亡くなったのね。 なんとピンターと生まれが同じ年なの。 ホール演出のシェイクスピア作品では英国調科白の言い回しと役者の独特な存在感に圧倒されたのを覚えている。 でも彼に続くナショナル・シアターの演出家は大きく変わってしまった。 以降のNTやRSCは世界の潮流に飲み込まれていったのね。