■よさこい節

■原作:土佐文雄,作曲:原嘉壽子,指揮:田中祐子,演出:岩田達宗,演奏:東京ニューシティ管弦楽団,出演:泉良平,佐藤美枝子,所谷直生,日本オペラ協会合唱団,多摩ファミリーシンガーズ
■新国立劇場・中劇場,2017.3.4-5
■民謡替歌としては知っていたが鋳掛屋の娘お馬と和尚純信との悲恋物語を聞くのは初めてである。
結婚を許されない真言宗の戒律などから二人の愛は社会から追い詰められていく。 純信は世間をみて心揺れるがお馬の純真さと芯の強さで立ち直る。 二人は「恥じることはない」「思い残すことはない」愛の心情を持ち続ける。 「死を考えるのは仏道ではない」。 晒し者にされた純信とお馬は流刑で別れ別れになり幕が下りる。  二人がここまで生きていたことが何よりである。
お馬の愛の言葉は艶めかしい。 「・・体が溶けるようだ」。 そして二人に対する村人たちの噂話はキツイ。 今ならインターネット大炎上のような状況だろう。
レチタティーヴォが多いが気にならない。 中でも状況説明が舞台を整然とした流れにしている。 しかも民衆の動きや美術や照明も規律があり淀みがない。 指揮者田中祐子の手や腕の滑らかな動きが劇場にリズムを作り出す。 愛や噂話の生々しさをこれらが包み込んで物語を豊かにしている。
また背景として語られる黒船来航、安政大地震、愛染明王、般若心経なども飽きさせない。 「よさこい節」が初めて歌われるのは1幕途中だが絶妙なタイミングだった。 ところで二人の仲を裂いた寺小坊主全慶の反省は長演技だったが短くてもよい。 彼の立場はよく分かる。 日本語字幕があったが今回は助かった。 仏教用語や方言が多かったからである。
*2017都民芸術フェスティバル参加公演