■夢の劇、ドリーム・プレイ

■原作:J・A・ストリンドベリ,演出:白井晃,台本:長塚圭史,振付:森山開次,出演:早見あかり,田中圭,江口のりこ,玉置玲央,那須佐代子
■神奈川芸術劇場・ホール,2016.4.12-30
■神の娘アグネスが人間世界を経験する物語です。 前半は愛や結婚など身近な生活の話を、後半に差別や貧困など社会問題や政治の話に広げていきます。
そして彼女が天に戻る時に、この世の人々は惨めで哀れだと思っていたにも係わらずいとおしい気持ちがおそってきます。 心身に湧き起こる愛おしさこそが、人が生きていくこと死んでいくことが何であるかを彼女が掴み取った証しだとおもいます。 劇場の開かずの部屋に何もなかったのも、この愛おしさという人や物の関係の中にしかない見えないものだからでしょう。
舞台は小道具が散らばっていてダンスもありサーカス小屋のようで楽しさと寂しさが入り交じっています。 台詞は分かり易いのですが奥行が無い。 でも一つ一つの話が積み重なっていき後半は深みのある世界が滲みでてきました。 終幕には詩の朗読もあるためか全体が叙事詩を観たようなイメージを持って終わります。
長塚圭史の尖がったところを白井晃が丸め森山開次がずらしてつり合いの取れた舞台になっていた。 乾いた夢をみているような観後感でした。
*劇場サイト、http://www.kaat.jp/d/ygdp