■安全区、堀田善衛「時間」より

■作・演出:獄本あゆ美,出演:メメントC
■Geki地下Liberty,2016.3.17-21
■観客の多くは20歳代女性と70歳代男性です。 面白い組合せですね。 堀田善衛はインドや上海、スペインでのエッセイしか読んだことが無い。
時代は1937年の南京、主人公は中国人林英呈。 この時代と場所で中国人が主人公の日本の作品は初めてです。 彼は国民党幹部でかつては英国・日本に留学したこともある。 そこに南京難民被害報告を反証するため日本の上級工作員田之倉が乘り込んでくる。 彼も所謂知識人です。 二人の周りで南無阿弥陀仏と唱えている村田従軍僧を含めて、この三人の国家観や戦争への対応の違いが舞台の見所です。 それと林の妻蓮華、その妹莽莉など女性たちが崇高さのある演技で目の前の醜い現実を描きます。 観客に女性が多いのは演出家を信頼していて魅力もあるからでしょう。
帝国植民地政策を中国で誠実に広めようとする田之倉は、乱れ切った日本軍下級兵士代表の村田を口論の末射殺します。 しかし林は田之倉も村田も同じ穴の貉だと見抜いている。 妻と腹の子供を殺された林は、梅毒のため麻薬中毒になってしまった妹をいたわりながら未来を見つめ幕が下ります。 演出家の思いが詰まった素晴らしい舞台でした。
*チラシ、http://mola-k.com/wp-content/uploads/2016/02/memento_anzen2.jpg