■夏芝居ホワイト・コメディ

■作:鶴屋南北ほか,演出:鈴木忠志,出演:観世栄夫,渡辺美佐子,白石加代子,吉行和子ほか
■早稲田大学・小野記念講堂,2016.1.25(アートシアター新宿文化,1970年収録)
■鶴屋南北作「杜若艶色紫」を歌舞伎の数場で構成し、人形浄瑠璃「加賀見山旧錦絵」の一部を劇中劇にした舞台の記録映画である。 上映時間約60分。 フィルム状況は補修しているが役者の細かい表情は読み取れない。
着物や反物を内幕にした奥が浅い舞台である。 科白は歌舞伎調で早口のため追うのが大変。 地歌舞伎を観ている感じだ。 観世栄夫と白石加代子の突き抜ける声が素晴らしい。 江戸時代と現代をなんなく飛び越える声である。 また尾上(渡辺美佐子)を草履で打つ岩藤(白石加代子)の喋り方にも圧倒される。 演出家鈴木忠志の特徴ある存在感や様式美は舞台にはっきりと現れていない。 役者の個々力量が目立っている。 当時の映像は初めてだがその時代に立ち会わないと大事なところは見えてこない。 役者も観客も同じ時代を走っているから舞台は面白いのだろう。
アーフタートークを聞く。 出席は渡辺美佐子・白石加代子・大笹吉雄、司会は岡室美奈子。 とても面白かった。 少し記すと・・。 なぜ新劇渡辺美佐子が鈴木忠志の芝居に参加したのか? 詳細は不明だが観世栄夫の仲介だった(大笹)。 なぜ南北なのか? 当時は俳優座や青年座が南北を取り上げこの作品もその流れである。 南北が歌舞伎に広まったのはその後である(大笹)。 なぜ新人会を脱会したのか? 映画作品を舞台化して全国を回る計画に賛成できなかった(渡辺)。 他劇団との関係は? 唐十郎は行き来していたが寺山修司はお互い認め合っていなかった(白石)。 なぜ文学座・俳優座・民藝等の劇団の壁が壊れていったのか? 日生劇場(次に東横劇場)ができたからである。 この劇場は壁を無視した(大笹)。 ・・。
*館サイト、http://www.waseda.jp/enpaku/ex/4235/