■針とアヘン-マイルス・デイヴィスとジャン・コクトの幻影-

■作・演出:R・ルパージュ
■世田谷パブリックシアタ,2015.10.9-12
■直方体の内側3面を舞台にして他面を取り除いた面白い構造です。 点対称で3面が回転するので床が壁に、壁が床に入れ替わっていきます。 これに小道具と映像を付加してホテルからスタジオへそして街へと役者が空間を跨ぐように移動していく。 床が傾斜しているので役者を紐で支える場面もあります。
物語はジャン・コクトーのアメリカ旅行回想とマイルス・デイヴィスのパリ公演を過去背景にして主人公であるカナダ人放送作家が仕事や日常生活を語り演じていきます。 彼はコクトーとの二役です。
この舞台構造とクロスカッティングを多用するストーリーの重複構造が融合して摩訶不思議な世界が現前します。 1949年のパリとニューヨークの風景が交互に映写され当時を知らないのですが懐かしさが漂ってきます。 ヌーベルバーグとモダン・ジャズの夜明け前ですからこの二つに興味があれば尚更です。
作品名は阿片からきているようですがコクトーとデイヴィスは麻薬から立ち直っています。 主人公の放送作家は妻?との関係が冷たいままで精神的に参っている。 しかし二人のように立ち直る機会を狙っている終幕にみえました。 深く眩暈がする舞台でルパージュのベスト作品に入るでしょう。
*2015年F/T「融解する境界」連携作品
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/20150714-2661.html