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■天號星 てんごうせい

■作:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:古田新太,早乙女太一,早乙女友貴,久保史緒里,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2024.4.5-15(ミラノ座,2023.9.14-10.21) ■引導屋の半兵衛と殺し屋銀次の心(=意識)が入れ替わるSF風物語になっている。 この種の話は心が元の身に収まることが多い。 しかし、そうはいかない。 ここが作者と演出家の強いところです。 悪代官とヤクザの談合、用心棒の登場、これに新興宗教が庶民に入り込み、佳境には親子の情を強調し幕が下りる。 歌唱も入り、この手のチャンバラ時代劇はいつ見ても楽しいですね。 役者の演技の激しさは勿論、科白も演技に耐える質・量を持っていました。 *2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演 *ミラノ座オープニング作品 *ゲキxシネ2024年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/100648/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、いのうえひでのり ・・ 検索結果は13舞台 .

■刀剣乱舞、月刀剣縁桐 つきのつるぎえにしのきりのは

■原案:「刀剣乱舞ONLINE」,演出:尾上菊之丞ほか,出演:尾上松也,尾上右近,中村鷹之資ほか ■シネリーブル池袋,2024.4.5-(新橋演舞場,2023.7収録) ■原作はオンラインゲームらしい。 未来から1550年代に遡り足利義輝の暗殺、いわゆる「永禄の変」を阻止する時間遡行軍と戦う6人の刀剣男子を描く。 物語はしかし、義輝暗殺を実行する気配が無い。 歴史を変えないため刀剣男子が義輝を殺すことになる。 奇妙なストーリーです。 歴史がループしてしまう。 今の歴史が絶対のため面白さも半減ですね。 観後に「永禄の変」を調べたが推測部分も多々あり複雑です。 室町幕府末期のため混乱していたのでしょう。 舞台はヒト・モノを含め歌舞伎のリソースを全て使い切ろうとする構成です。 しかも動きも科白も型に嵌まっていて硬い感じがする。 特に舞踊を取り入れた仕草が際立ちます。 琵琶演奏もある。 新古典派とでも言うのでしょうか? 硬い舞台にもかかわらず観客は若い女性で一杯でした。 贔屓筋ですか? いつものシネマ歌舞伎はオバさんで混み合うのですが今日は新鮮でした。 *シネマ歌舞伎作品 *シネマ歌舞伎、 https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/2477/

■運命の力

■作曲:G・ヴェルディ,指揮:ヤニック・ネゼ=セガン,演出:マリウシュ・トレリンスキ,出演:リーゼ・ダーヴィドセン,ブライアン・ジェイド,イーゴル・ゴロヴァテンコ他 ■東劇,2024.4.19-25(メトロポリタン歌劇場,2024.3.9収録) ■METでは20年ぶりの上演らしい。 「卓越した歌手の存在と複雑な台本の処理、この二つが揃わないと上演は不可能だ!」。 指揮者がインタビューで答えていたが、今回この二つがクリアできたと言うことね。 はたしてソプラノ、テノール、バリトンの3歌手は聴きごたえ十分。 ただしドン・カルロ役イーゴル・ゴロヴァテンコはMET初出演で張り切り過ぎたかも。 バリトンには聴こえなかった。 そして映像を取り込んだ現代の演出は現実的で、レオノーラの修道院生活との乖離が際立つ。 でも戦争が抽象化され落ち着きを取り戻した後半からヴェルディの世界へ戻っていくことができたわよ。 占い師プレツィオジッラが登場する場面は地獄に直結した雰囲気がでていて興奮、それと存在感ある父の亡霊の度重なる出現もね。 運命の力とは戦争と宗教を絡めて、生まれや育ちなど階級的な社会的出自に関わる力だと思う。 だから当時の皆がヴェルディに熱狂したのね。 *METライブビューイング2023作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/5504/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、トレリンスキ ・・ 検索結果は4舞台 .

■デカローグ2・4

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,演出:村上聡史,出演:前田亜季,益岡徹,近藤芳正,夏子ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.4.13-5.6 ■前回と演出家は代わったが舞台の流れは変わらない。 美術も照明も音楽も、そして役者の動きや科白の雰囲気も似通っている為です。 しかし回が積み重なっていくほど人物たちの心の襞は複雑化しているように感じられる。 観客の心に物語が積み重なっていくからでしょう。 今回の2題は結末が分かり難い。 「デカローグ2」は愛人の子供を宿っている妻は重病の夫を前になぜ心境を変化させたのか? 「デカローグ4」は妻からの手紙を夫も娘も読んでいなかったのか? どうであれ、これだけ心を捻り続けるのは十戒の祟りかもしれない。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、上村聡史 ・・ 検索結果は6舞台 .

■デカローグ1・3

■原作:クシシュトフ・キェシロフスキ他,翻訳:久山宏一,台本:須貝英,演出:小川絵梨子,出演:ノゾエ征爾,高橋惠子,亀田佳明,千葉哲也,小島聖ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.4.13-5.6 ■二本立てです。 一話完結型の一時間テレビドラマを観ているようです。 重量感は薄い。 「デカローグ1」は安全を検証したにもかかわらず予期せぬ事故で命を落とす話です。 これを宗教に結びつけオチにしている。 「モーセの十戒」を題材にしているらしい。 戒律を読むと当たり前のことしか書いてない。 しかし日本的無神論者の私からみると異様な文章に感じます。 続いて「デカローグ3」を観る。 クリスマスイブに元恋人の女が訪ねてくる話です。 男は素晴らしい家族を持っている。 にもかかわらず、イブの日にここまで女に付き合うのは何故か? 二人の過去をいろいろ想像するが限界があります。 作者は20世紀後半に活躍したポーランドの映画監督です。 数十年前に彼の映画を数本観ているがまったく記憶にない。 今日の舞台も映画らしい雰囲気がある。 例えばパソコン画面の動き、ドライブ場面の処理、ダラダラ続く男女の姿にそれが現れている。 物足りない舞台だったのは映画時間を舞台空間に持ち込んでも熟成し難いからでしょう。 10話で完結するので最後まで観ないと何とも言えないのですが。 *NNTTドラマ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小川絵梨子 ・・ 検索結果は20舞台 .

(中止)■能楽堂四月「二九十八」「嵐山」他

■国立能楽堂,2024.4.10,4.13 ■体調を崩し寝込んでしまう。 4月10日「二九十八」「嵐山」、13日「靭猿」「吉野静」の観劇はキャンセルする。 布団の中でウツラウツラしていると忘れていた過去が次々に現れる。 退職した仕事の夢もみる。 コンピュータ業務に携わっていたが、いつもスケジュール管理に振り回されていた。 ・・設計書の合意、データベース評価、プログラミング進捗、テスト判定から本番稼働へ・・。 夢に上司や同僚、業者の営業や技術者が登場する。 夢から覚めて、もう<納期>は考えなくていいんだ!と自分に言い聞かせるが・・。 スケジュールは人生に不要だ、と。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/4149.html?lan=j *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/4150.html?lan=j

■NHKバレエの饗宴2024

■指揮:井田勝大,演奏:東京フィルハーモニー交響楽団 ■NHK・配信,2024.3.24(NHKホール,2024.1.27収録) *下記の□5作品を観る. □ルール・ブルー ■振付:イリ・ブベニチェク,音楽:J・S・バッハ他,舞団:東京シティ・バレエ団 ■初めて出会う振付家です。 奇抜さは無い。 動作は大きくもなく速くもない。 バレエ3割ダンス7割の比率ですか? 幾つもの(絵画の)額縁が登場します。 小さな額縁は持って踊る。 薔薇や剣も持つ。 「・・黄昏時にルーブル美術館に飾ってある中世絵画から抜け出した人物たちの恋愛を描いている」。 プレトークで振付家が言っていましたね。 よくある物語だが起伏に富みまとまっていました。 選曲は凡庸だが、ピアノの爽快さから弦楽器の深みへ進む流れが飽きさせない。 □眠れる森の美女-グラン・パ・ド・ドゥ- ■振付:コンスタンチン・セルゲーエフ,出演:永久メイ,フィリップ・スチョーピン,舞団:マリンスキー・バレエ団 ■二人は落ち着いていました。 力量が見えてきます。 永久メイの関節を意識した動きが面白い。 □くるみ割り人形-グラン・パ・ド・ドゥ- ■振付:ピーター・ライト,出演:ワディム・ムンタギロム,金子扶生,舞団:英国ロイヤル・バレエ団 ■二人は貫禄十分です。 安心して観ていられる。 チャイコフスキーを聴くと一気にバレエの世界へ入っていけます。 □幻灯 ■振付:小尻健太,音楽:リヒター(ヴィヴァルティに基づく),出演:中村祥子,小尻健太 ■「人生の節目だ」。 プレトークでの二人の言葉です。 まさに人生の折り返し点の一幕でしょう。 音楽が二人に寄り添っている。 美術と照明は暗いが希望がみえる。 振付も落ち着いていた。 大人の味が出ていました。 □ドン・キホーテ-第3章- ■振付:アレクセイ・ファジェーチェフ,音楽:L・ミンクス,出演:米沢唯,速水渉悟ほか,舞団:新国立劇場バレエ団 ■トリを飾るにふさわしい。 ダンサーたちも最高です。 衣装や美術も素晴らしい。 整然と規律あるところにこの舞団の特徴が現れていた。 米沢唯は知っていたが、いつのまにか知らないダンサーが増えましたね。 新旧交代が激しいのでしょう。 ひととおり観て、気に入った作品は「幻灯」、気に入った振付は「ルール・ブルー」でし

■TIME

■音楽:坂本龍一,演出:高谷史郎,出演:田中泯,宮田まゆみ,石原淋 ■新国立劇場・中劇場,2024.3.28-4.14 ■中劇場は半年ぶりだが・・、何かが変わった!? 円形客席を180度まで拡張したようです。 吹っ切れた感じですね。 いままでは中途半端で落ち着かない劇場だった。 ただし今日の舞台は奥があるので両端の新客席は使用していない。 そして舞台に目を凝らすと最初はよく分からなかったが水が張ってある? ・・暗いなか、宮田まゆみが笙(しょう)を奏でながら舞台を横切っていく。 水や鐘の音が入り混じる。 田中泯が登場し・・蠢・き・回・る。 映像と朗読は彼本人を事前収録して舞台の演技と同期させていく。 田園や都市の風景も映し出す。 一つ目の話は死に際の女が彼に語り掛ける。 「死にます。 百年経ったら会いにきます」。 そして墓を掘り彼女を埋める。 二つ目の話では彼が旅の途中で夢を見る。 長い夢から覚めたが、「束の間の時だったのだ」。 再び彼は水の中で・・戯・れ・回・る。 百合の花が咲いた。 「百年経たのか」。 終幕、宮田まゆみが笙をふきながら再び水の上を横切っていく・・。 昨日観たジェフ・ミルズのブラック・ホールは空間を意識していたようだが今日の舞台は時間である。 音楽や映像そして二つの語りはとても練られていた。 田中泯も存在感があった。 統合された世界が出現していました。 物語が気になったので帰りにプログラムを購入する。 朗読された原作は「夢十夜」「邯鄲」「胡蝶の夢」。 ブログはここで終わりにしてプログラムの残りを読むことにします。 *パルコ劇場、 https://stage.parco.jp/program/time/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、高谷史郎 ・・ 検索結果は6舞台 .

■THE TRIP-Enter The Black Hole-

■演出:ジェフ・ミルズ,美術:C.O.L.O,衣装:落合宏理,振付:梅田宏明,出演:戸川純ほか ■ZEROTOKYO,2024.4.1 ■ジェフ・ミルズのブラックホールへ突入! 音楽・映像・照明そしてダンス、そして詩の朗読が交差する舞台がここに出現する。 ・・宇宙服姿のジェフ・ミルズの挨拶に始まり、彼の操作するドラムマシンから発するテクノポップ、背景にブラック・ホールらしき映像を映し出した舞台。 そこに4人のダンサーたちが踊りまくる。 途中、ボリューム感あるケープを纏う戸川純が詩のような短い科白を朗読し、再びダンス、朗読、ダンスと続く・・。 総合芸術としてまとめあげるのは大変ですね。 ダンス振付はリズム感ある音響に合わない、照明も音響に追随できない、宇宙観を伴う映像は凡庸。 即興が命ですがちょっと噛み合わなかった。 視覚と聴覚そして言語を身体へ凝縮・統合することができるか? *劇場、 COSMIC LAB presents JEFF MILLS『THE TRIP -Enter The Black Hole-』 supported by AUGER | ZEROTOKYO | Shinjuku Kabukicho

■トリスタンとイゾルデ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:大野和士,演出:デイヴィッド・マウヴィカー,出演:ゾルターン・ニャリ,ヴィルヘルム・シュヴィングハマー,リエネ・キンチャ他,管弦楽:東京都交響楽団 ■新国立劇場・オペラパレス,2024.3.14-29 ■薬や酒を前面に出すと舞台は大きく揺れる。 これを脇役にできるかどうかが要ね。 当作品の媚薬が効き過ぎるのはいつもの通り。 そして美術は抽象的で歌手の動きは少ない。 すべてワーグナー風だが有機的に熟成していかない。 演出家デイヴィッド・マクヴィカーのワーグナーは初めてよ。 彼はワーグナーが苦手なのかもしれない? 舞台は2010年シーズンの再演らしい。 これは見逃しているの。 指揮は再び大野和士で、休息を含め上演時間は5時間半。 演奏はぶれないし都響が気持ちよく聴かせてくれる。 そしてマルケ王は存在感があった。 トリスタンがちょっと疲れていたかな?、幕が進むほどきつくなるし・・。 今回はタイトルロールの二人が変更になってしまった。 トリスタンは2カ月前の交代のため慌ただしい。 これも媚薬を操れなかった理由かもね。 それでも作品の持つずっしり感は心に届いたわよ。 *NNTTオペラ2023シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_027412.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、デイヴィッド・マクヴィカー ・・ 検索結果は11舞台 .