■東海道四谷怪談

■作:鶴屋南北,演出:森新太郎,出演:内野聖陽,秋山奈津子
■新国立劇場・中劇場,2016.6.10-28
■舞台美術はシンプル且つ斬新だが、この締まりのない劇場に誰もが苦労しているのは確かだ。 オモシロイというかツマラナイというか焦点が定まらない舞台だった。 お岩以外が全員男性の為である。 笑ってしまう場面が多いので、死んでゆく者の哀しみや苦しみが素直に伝わってこない。 装飾的現代歌舞伎を狙ったのかもしれない。
気に掛かったので終演後プログラムを買ってしまった。 「南北は・・滑稽を好みて、人を笑わすことを業とす」(諏訪春雄)。 「お岩は男性原理の追及を断罪した・・」(小林恭二)。 この二か所を読んで、怪談なのに笑いが多いのは?お岩以外が男性なのは?の問いが少し解けた。
「南北は非日常が優越している」のはわかるが伊右衛門のニヒルな殺人が表面を覆いすぎている。 「お岩は神である」ようにもみえない。 幽霊場面の多さも江戸時代ならともかく戸惑ってしまう。 この二つが日常と非日常の交流ができず劇的への道が閉ざされてしまった。
お岩が宅悦を呼び寄せお歯黒をつけ母の形見の櫛で髪をすきはじめる場面は唯一女としての存在感が出ていた。 場面転換は独特のリズムがあって面白い。 音楽はちょっとズレていたが、斬新な美術を背景に役者の動きと台詞が上手く同期していたからである。 変化球で三振に打ち取られたような観後感のある舞台だった。
*NNTTドラマ2014シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/yotsuyakaidan/