■カルメギ

■原作:A・チェーホフ,脚本:ソン・ギウン,演出:多田淳之介,出演:東京デスロック,第12言語演劇スタジオ
■神奈川芸術劇場・中スタジオ,2014.11.27-30
■二か国語で違和感のない芝居は珍しい。 両国語の台詞が密に混ざり合っている為です。 逆に発音に関する科白が多くあるのも面白い。 でも役者たち身体にギコチナサが見えます。 言葉より混ざり合っていなかった。 これが荒削りな舞台を作っています。
この粗さが統治時代を演ずる時に出現する鬱積していたマグマにみえます。 日本人役者がこのマグマに対峙するので、外からみる観客は客観的に統治下の状況を捕まえることができます。 例えば東京は?、恋愛の違いは?、韓国女性と結婚した日本人は?、日本演劇の状況は?、・・、当時の韓国からいかに見られていたのか分かるのです。 一国だけの俳優だとこの遣り取りが作れない。
また20世紀の事件名が表示されますが、これも違いに気づかされます。 たとえば戸籍制度、創氏改名、志願兵令などは統治側からは出てこない。 三度の東京オリンピックが選ばれたのは脚本や演出家世代の興味ある事件なのでしょう。
舞台は上手から下手へ人が流されるように進んでいきます。 「かもめ」を下敷きにして戦争を上から被せる舞台ですから観る者は分断させられます。 これを繋げるにはニーナでは荷が重過ぎる。 男女関係も荒削りの舞台に飲みこまれてしまいましたね。 逆に叙事詩的な表現を活躍させることが出来た。 チェーホフと統治時代を独特なリズムで描けた理由がここにあります。
*劇場、http://www.kaat.jp/d/tdl_kaat