■ヒネミの商人

作・演出:宮沢章夫,出演:遊園地再生事業団
座・高円寺,2014.3.20-30
日常を少しばかりずらしていく科白が続きます。 役者の動きも突然にユックリ歩いたり静止したりします。 たとえば印刷工場を営む主人安西は無造作に懐から札束を取り出したりします。 不条理な動きが重なり劇的な舞台が出現します。
しかし物語は無意味や非論理的な結果に終わりません。 後半に安西が印刷工場で贋札作りをしていたことがわかります。 銀行員渡辺も見破れない。 信用だけで成り立っている紙幣は科学技術的に100%同じだと偽札でなくなるということですか。
このためか安西もカメラ屋砂原も罪の意識を見せません。 また安西は姉から連帯保証を頼まれています。 土地を提供しますが土地に生えている草木一本でも担保から外してくれと「ヴェニスの商人」の現代版を渡辺に披露します。
安西の娘と同級生である銀行員渡辺の娘の「ヴェニスの商人」の部活練習もワサビのような効果があり面白い。 「紙幣の信用」と「土地の担保」の二つの話に不条理的風景が被さり、現代社会の不思議な姿を見事に浮かび上がらせた舞台でした。